「あの・・・お婆さん言ってましたよね。村長に寄生がどうのって。」
宿屋について一息ついている時、リョウは老婆に尋ねた。
分からないことが多すぎるので、疑問に思ったことから聞いていくしかない。
「ああ、言ったよ。あんたの村の村長はZEROの手下の邪気に取りつかれてたのさ。
村長の様子が前と変わってはいなかったかい?
邪気が取り付くと性格が冷たく、残酷なものに変わってしまうんだよ。」
確かに以前の村長は穏やかで、誰にでも優しい人物だった。
村の人にも好かれていて・・。
彼が変わったのは2年前からだ。
・・・あの事件以来、村長は周囲の人に冷たくなった。
実の息子のノアにでさえだ・・。
人を信じなくなり、常に自分の利益になることしかしなくなった。
ノアが村長のことを嫌いになり始めたのもその頃・・・。
あんなに仲の良い親子だったのに。
「ZEROはあんたの存在を危険視して村長に邪気を寄生させて、あんたの様子を伺っていたのさ。
そして、争いを止めるコマであるあんたを殺す機会を待っていた。
私が気づいたから、その邪気は処分してきたさ。今頃は、元の村長に戻っているだろう・・。」
それを聞いてリョウはほっと息をついた。
心の中に安堵感が広がり自然と顔がほころぶ。
それならば邪気は2年前のあの事件以来、村長に寄生して僕を監視していた・・ということか。
僕を監視し始めたのが2年前・・・。
僕は選ばれたものだから、邪気は僕を狙ってる・・・。
!?
「待って! お婆さん!! じゃあ、僕がZEROを止める歯車に選ばれたのは2年前だっていうの?」
2年前のあの事件で、僕が歯車に選ばれたというのか・・・?
「そう言う事になるねぇ・・。でも、私にとっちゃ2年前に何があったのかは問題じゃないよ。
全ては運命。あんたは、そうなる定めだってこと・・。」
それに2年前に何が起こったかなんて言いたくなければ言わなくていいさ、と老婆は続けた。
彼女にとってはどうでもいい事らしい。
彼女が2年前の事故のことを聞かなかったのは有難かった。
あの事故のことは話したくない。
まだ、思い出すだけで涙がでそうだった。
「さぁて、おおまかな事は分かったね。では、あんたには出発してもらおうかね。
歯車の坊や?」
老婆は優しい瞳をしてリョウに告げた。
朝日が昇ろうとしていた・・・。
第三章 〜理由〜 Fin